企業緑地の進化の歴史 〜 工場緑地を例に


 事業所に緑地を配置することは、工場の外観をきれいにみせるために昔から行われてきた。(修景を目的とした緑地)
 1970年のいわゆる「公害国会」において、わが国の公害規制の基盤が形成され、事業所の緑地も周辺環境への公害を緩和するための緩衝緑地としての意味合いが強くなり始めた。さらに、1972年の四日市ぜん息裁判を契機として、一定規模以上の事業所に緑地の設置を義務付ける工場立地法が制定された。
 その後、積極的な事業所においては、海外のコンセプトである「インダストリアルパーク」「ガーデンファクトリー」などへの取り組みもあり、社会貢献を意識した緑地整備が進んだ。
 1992年の地球サミットを契機に、地球レベルの環境問題が課題となり、公害基本法も環境基本法に進化した。また、1996年には、ISO14001規格が発行された。こうしたなかで、企業の環境意識が急速に広がり、また環境配慮を経営戦略に取り入れるまでに進化していった。
 こうした流れを受けて、公害防止の役割を終えた工場緑地の意義の見直しを図るために、1997年に工場立地法が改正され、工場緑地も地域の環境に合わせた質と量が問われることとなった。
 したがって、企業緑地が今後進化するであろう方向は、以下の理念に集約されると研究会では考えている。
  • 自然生態系と共生すること→生態系の一員としての責任(Ecological Responsibility)
  • 企業経営を持続させること→財務的持続可能性(Financial Sustainability)
  • 地域と共生し活性化させること→社会的責任(Social Accountability)
である。